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土地オーナー様のなかには、土地活用をしたいと考えているものの、自己資金が足りずに諦めてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、自己資金に余裕がない場合であっても、等価交換と言う方法を使えば低予算で土地を使った事業に着手することができます。
この等価交換とは、一体どのようなものなのでしょうか。今回は、等価交換の仕組みと、そのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
等価交換とは?

等価交換は、4つ存在する土地活用方法の内のひとつです。そのため、他の3つの方法(事業受託、土地信託、定期借地権)と比較すれば、より鮮明に等価交換の全体像を捉えることができるでしょう。まずは、その4つの土地活用方法について詳しくご紹介していきます。
1等価交換
等価交換は、土地オーナー様が土地を提供し、土地活用専門会社が費用(主に建築費)を提供するという仕組みです。土地活用事業は、土地活用専門会社が主体となって進めていくため、等価交換をする場合には、まず土地オーナー様と土地活用専門会社が提携しなければなりません。
等価交換での事業内容は問わないため、ビル建設・経営でも、マンション・アパート建設・経営でも、施設建設・経営でも等価交換方式を使用できます。
例えば、等価交換でマンション・アパートを建設したとしましょう。そのマンション・アパートは、土地オーナー様と土地活用専門会社が共同で所有することになり、所有権の割合は両者の出資比率で決めます。そのため、土地オーナー様が所有する土地の面積は、等価交換をはじめる前より減ることになる訳です。
等価交換には全部譲渡と部分譲渡がある
等価交換には、全部譲渡と部分譲渡の2つの方法があります。ここでもマンション・アパートを建設すると仮定して解説していきます。
なお、全部譲渡も部分譲渡も、最終的には「結果は同じ」になります。
・全部譲渡とは
全部譲渡とは、マンション・アパートを建てる前に、土地オーナー様がマンション・アパート用地のすべてを土地活用専門会社に譲渡(売却)することです。そしてマンション・アパートが完成したら、土地活用専門会社と土地オーナー様で、建物と土地の所有権を分けます。全部譲渡は、土地の所有者様が複数存在する場合に採用されます。
・部分譲渡とは
部分譲渡とは、土地オーナー様が土地活用専門会社から取得する建物代金に相当する一部の土地だけを譲渡(売却)することです。
マンション・アパートが完成したら、土地活用専門会社と土地オーナー様で、建物と土地の所有権を分けます。
したがって、同じマンション・アパート、同じ出資比率であれば、全部譲渡でも部分譲渡でも最終的な所有の状態は同じになると言うことです。
2事業受託
事業受託は、土地オーナー様が事業主体になり、土地活用のすべてを土地活用専門会社に任せる方法です。
例えば賃貸マンション経営・アパート経営に乗り出す場合、事業計画、建設、入居者様募集、管理と言った業務は土地活用専門会社が請け負います。そして土地オーナー様は、必要な費用を土地活用専門会社に支払うと言う仕組みです。
3土地信託
土地信託では、土地オーナー様の土地の所有権一度信託会社に移します。信託会社はその土地を運用し、運用益の一部を信託配当金と言う形で土地オーナー様に支払います。
そして、土地信託の契約期間が満了すると、土地の所有権が土地オーナー様に再度戻されると言う仕組みです。
4定期借地権
定期借地権は、土地オーナー様が土地だけを借地人に貸す形態です。借地人は土地に建物を建て、使用し、土地オーナー様は借地人から地代を受け取ります。
一般的な借地権ではなく定期借地権を設定することで、土地オーナー様は契約満了時に土地の返還を受けることができます。
等価交換で土地活用する際のメリット・デメリット

等価交換で土地活用する場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
メリット
メリットとしては、次の3つが挙げられます。
・自己資金が少なくても開始できる
等価交換には、土地オーナー様の資金負担が少ない、というメリットがあります。提携する土地活用専門会社が資金を負担するからです。
そのため、土地オーナー様の自己資金が少なくても土地活用に乗り出すことができます。
・事業ノウハウがなくても開始できる
土地オーナー様が提携する土地活用専門会社は、言わば「土地活用のプロ」です。そのため、土地オーナー様自身にノウハウがなくても、土地活用ができます。
ただし、より確実に土地活用を成功させるためにも、土地オーナー様は提携する土地活用専門会社を慎重に選考することが大切になります。
・高収益が期待できる
土地活用では一般的に、多額の資金・資産を使って事業規模を大きくするほど、高い収益が期待できます。等価交換は、土地オーナー様の土地と、提携する土地活用専門会社の資金を持ち寄るので、土地オーナー様が単体で土地活用をする場合よりも事業規模が大きくなる訳です。
そのため、土地オーナー様の収益も高くなることが期待できるでしょう。
デメリット
一方、等価交換のデメリットとしては、次の4点が挙げられます。
・土地・建物の持分割合を決めにくい
例えば、等価交換でマンション・アパートを建てたとしましょう。その場合、マンション・アパートの建物と土地の所有権は、土地オーナー様と土地活用専門会社の出資比率で決まります。
このように説明すると、粛々と協議が進む印象を持たれるかもしれませんが、実際は建物と土地の所有割合の協議が難航することも少なくありません。例えば、土地オーナー様が提供する土地の評価額をいくらに設定するかで出資比率が変わってきます。
また、マンション・アパートの建設費が高騰すれば、土地活用専門会社の出資額が高まるため、土地活用専門会社の出資比率が高まります。それは土地オーナー様の出資比率が下がることを意味し、さらにそれは建物と土地の所有権の「取り分」が減ることを意味する訳です。
しかも、土地オーナー様は言わば「土地活用の素人」であり、相手の土地活用専門会社は「土地活用のプロ」です。土地活用専門会社によっては言いくるめられてしまう危険も否めません。
だからこそ、土地活用専門会社の選定は慎重に行なう必要があるのです。
・権利が複雑化
建物と土地の権利を分けると言っても、建物も土地もひとつずつしかありません。実際はひとつの物を2者で分けることになるので、権利関係が複雑になります。
・土地を手放す
等価交換では、土地オーナー様が土地の一部を差し出すことになります。つまり、自分が所有する土地が減るということです。
その代わりに建物の所有権を得ることになる訳ですが、先祖代々受け継がれてきた土地の場合、土地の一部を差し出すのは抵抗を感じるかもしれません。
・節税効果が低下する
等価交換でも所得税や相続税などの節税効果はありますが、等価交換をせずに、土地オーナー様自身で土地活用を行なったほうが節税効果は高いかもしれません。
節税効果が低下するということは、土地オーナー様の家計にとって支出が増えるのと同じです。
そのため、土地オーナー様は等価交換をする前に、等価交換のメリットが節税効果の低下を補えるかどうか何度もシミュレーションしたほうが良いでしょう。
等価交換を検討したほうが良い土地

等価交換に向いているのは、次のような性質を持つ土地です。
- 面積が広い
- 人気エリアにある(立地が良い)
- 面積が広い
- 人気エリアにある(立地が良い)
これらはいずれも、土地活用専門会社が魅力的に感じる土地の性質です。土地活用専門会社は「等価交換をしてでも、その土地を使った事業がしたい」と感じたときに、土地オーナー様に等価交換を提案します。
したがって、こう言った魅力的な土地をお持ちの土地オーナー様は、等価交換によってより効果的に土地を使うことができるでしょう。
等価交換するまでの流れ

続いて、等価交換で土地活用をする流れをみていきましょう。
提案または相談
土地活用専門会社は、等価交換による土地活用が有効であると判断した土地を持つオーナー様に、事業の提案をします。土地オーナー様は、土地活用専門会社からこのような提案があったら、しっかりとその内容を吟味しましょう。
また、等価交換に興味を持った土地オーナー様のほうから、土地活用専門会社に相談を持ちかけることも可能です。
出資比率の確認
等価交換を検討されている土地オーナー様は、出資比率について知っておく必要があります。例えば、等価交換による土地活用で賃貸マンション・アパートを建設することになったら、その建物と土地の所有権は、土地オーナー様と土地活用専門会社で分けることになります。このときの「分ける比率」は、出資比率で決まります。
150平方メートルの土地に延べ床面積600平方メートルの賃貸マンション・アパートを建てたとします。そして、土地オーナー様が出資した土地150平方メートルの価値が5,000万円で、土地活用専門会社が建設費などに現金1億円を出資したとします。
このとき、土地オーナー様は「土地50平方メートル、賃貸マンション・アパート200平方メートル」を所有し、土地活用専門会社は「土地100平方メートル、賃貸マンション・アパート400平方メートル」を所有します。
出資比率が1:2なので、賃貸マンション・アパートも1:2の比率で所有します。
土地オーナー様は「土地の評価額によって出資比率が変わり、出資比率が変わることで土地と賃貸マンション・アパートの所有率が変わる」と言う点に注意して下さい。
土地オーナー様は、土地活用専門会社と等価交換による土地活用の話をするときに、自身の土地の価値の評価に十分注意するようにして下さい。
収益のシミュレーション
土地オーナー様が等価交換での土地活用を考えるとき、収益について検討する必要があります。
土地オーナー様の視点でみると、等価交換による賃貸マンション経営・アパート経営は「土地の一部を手放して賃貸マンション経営・アパート経営から収益を得る」ことになります。
そのため、土地オーナー様の等価交換での土地活用が「成功した」と評価されるには、
土地を売却した収益
<
等価交換での賃貸マンション経営・アパート経営での収益
土地を売却した収益
<
等価交換での賃貸マンション経営・アパート経営での収益
になっていなければなりません。
もし、シミュレーションした結果、
土地を売却した収益
>
等価交換での賃貸マンション経営・アパート経営での収益
土地を売却した収益
>
等価交換での賃貸マンション経営・アパート経営での収益
となったら、土地を売却したほうが良い訳です。
建物設計
土地オーナー様が等価交換による土地活用を行なうことになったら、土地活用専門会社は建物の設計に入ります。土地オーナー様のご意見も設計に反映されますので、要望などがある場合はしっかりと共有したほうが良いでしょう。
契約
土地オーナー様が建物設計や事業内容に納得すれば、土地オーナー様と土地活用専門会社の間で正式に工事請負契約を締結します。
着工/竣工
工事請負契約を締結すると、土地活用専門会社は建物の建設工事に着手します。
権利移転
建物が完成すると、土地活用事業がスタートします。
土地オーナー様と土地活用専門会社は、土地と建物の権利を分けあうことになる訳ですが、その土地の一部の権利は、土地オーナー様から土地活用専門会社に移転します。
そして、建物の一部の権利は、土地活用専門会社から土地オーナー様に移転します。
管理、収益を得る
事業運営や建物の管理、入居者様の管理などは、土地活用専門会社が行ないます。そして、土地オーナー様は土地活用事業から収益を得るというのが一連の流れです。
まとめ
有効に土地活用したいならプロに相談しませんか

等価交換による土地活用事業は大規模になることが一般的です。大規模事業は大きな利益を期待できる代わりに、リスクも大きくなることを忘れてはなりません。ただし、そのリスクを把握した上で有効活用していけば、より安定的な土地活用事業を実現できるでしょう。
例えば、所有しているアパートの老朽化により空室が目立つとともに修繕費も増加傾向にあると言う土地オーナー様は少なくないでしょう。このような土地オーナー様が、借金を避け、自己資金の負担を抑えた建替えの手段として等価交換を選択されるケースがあります。その結果、土地を手放すことなく空室や老朽化の問題を解決でき、さらに安定経営も実現することができたという成功事例も存在します。
しかし、等価交換にはデメリットが存在するのも事実ですので、等価交換で提携する土地活用専門会社の選考は厳格に行なうようにしましょう。そして、実績のある会社を選ぶことをおすすめします。
※この記事は、2019年11月時点の情報に基づいて作成されています。
- 逆瀬川 勇造
さかせがわ ゆうぞう - 地方銀行にてリテール業務に従事後、不動産部門のある注文住宅会社にて新築住宅、不動産売買業務に携わる。 金融知識を活かした住宅ローン提案、綿密なヒアリングからのライフプランニング、税金や相続のアドバイスから税理士への橋渡しなど、新築住宅、不動産売買にまつわる金銭問題の解決を得意とする。